78枚のタロットカードを、手作業とAIの二段階で修繕しました。
きっかけは、ウェイト版タロットの「魔術師」を拡大して見たことでした。
黄色い背景にはシミのような色むらがあり、イラストの中には黒い点や白い線が残り、カードのフレームも画像の中央からずれていました。小さく表示すれば見過ごせる程度かもしれません。しかし、カードの絵柄も楽しんでいただくタロットアプリで、見なかったことにはできませんでした。
そこで、アプリに収録する78枚をすべて点検し、まず人の手で位置や外周を整え、その後にAIでイラスト内部を修繕。最後は再び人の目で一枚ずつ確認しました。
- 手作業:カードの位置、余白、フレーム外の汚れを調整
- AI修繕:黒い点、白い傷、塗りのずれ、色むらなどを改善
- 目視確認:78枚を全数点検し、問題のあった2枚は不採用
この記事では、ウェイト版タロットアプリのカード画像が、どのように変わったのかをご紹介します。
78枚のウェイト版タロットアプリを作りました
こんにちは、サンクタツリーです。
2026年6月、Android向けアプリ「タロット占い ウェイト版 象徴で読む78枚リーディング」をリリースしました。
大アルカナ22枚と小アルカナ56枚を収録し、伝統的なライダー・ウェイト版の絵柄を見ながら占えるタロットアプリです。カードの意味だけでなく、人物の姿勢や背景、小物など、絵に描かれた象徴にも目を向けられる内容を目指しています。
なぜタロットカードの修繕が必要だったのか
本アプリでは、Wikimedia Commonsで公開されているパブリックドメインのライダー・ウェイト版タロットカード画像をもとにしています。
古い印刷物をもとにした画像には、独特の色合いや線の揺らぎがあります。それは原画の魅力として残したい部分です。
一方で、78枚を確認すると、フレームのずれ、黒い点や白い傷、輪郭から外れた塗りなど、原画の風合いとは別に、画像上の傷みや不自然さに見える箇所も見つかりました。中には、鳥の体の一部へ背景の空色が入り込んでいるように見えるカードもありました。
今回のアプリでは、カードの絵柄そのものが主役の一つです。占い結果の画面で大きく表示したときにも、できるだけ気持ちよく絵を見ていただきたい。そのため、原画の雰囲気を変えず、明らかに不自然な箇所だけを整えることにしました。
修繕前の「魔術師」

この画像で特に気になったのは、次の3点です。
- カードのフレームと画像全体の位置がずれている
- 人物や背景に、黒い点や白い線が残っている
- 黄色い背景に、シミのような色むらが見える
出典:Wikimedia Commons「RWS Tarot 01 Magician.jpg」
第一段階:78枚を手作業で整える
最初からAIへ任せるのではなく、第一段階は自分の手で修繕することにしました。
理由は二つあります。AIが元の構図や象徴をどこまで保てるのか、まだ検証できていなかったこと。そして、タロットカードを扱うアプリの開発者として、一度は78枚と自分の手で向き合いたいと考えたことです。
手作業で行ったことは、ほぼ二つだけでした。
- カードが中央に近づくよう位置と余白を整え、適切なサイズに切り抜く
- イラスト内部には触れず、フレーム外の汚れや余分な線を消して周囲になじませる
作業内容は二つだけ。問題は、カードが78枚あることでした。
筆者は画像修復を専門としていません。汚れを消して周囲の色になじませ、位置と余白を確認する作業を一枚ずつ繰り返すと、想像以上に時間がかかりました。通常の開発業務の合間に進め、全カードを終えるまで数日を要しています。
しかも、この段階で整えられたのは位置と外周が中心です。イラスト内部の黒い点、傷、色むら、塗りのずれは残ったままでした。
78枚目を終える頃には、次の段階ではAIを活用しようと固く決めていました。
手作業で修繕した「魔術師」

カードは中央に近づき、外周も整いました。ただし、黄色い背景の色むらやイラスト内部の細かな傷は残っています。
それでも、この工程は無駄ではありませんでした。一枚ずつ見ることで、カードごとの構図や色使い、残すべき線が以前より見えるようになったからです。手作業を経験したことで、次のAI修繕に対して「何を直し、何を変えてはいけないか」という基準を持つことができました。
第二段階:AIでイラスト内部を修繕する
第二段階では、手作業で位置と外周を整えた画像をまとめ、AIによる修繕を行いました。
使用した仕組みや出力設定など、技術的な詳細はこの記事では割愛します。ここで重視したのは、AIに「きれいに描き直す」のではなく、元のカードを変えずに傷んだ箇所だけを整えるよう求めたことです。
AIへ伝えた4つの修繕方針
- 黒い点、白い傷、塗りのずれなど、明らかに修繕すべき箇所以外は変更しない
- 原画の画風、構図、人物、背景、小物を尊重する
- 修正すべきか判断に迷う箇所は、無理に補完しない
- 修繕によってモアレが目立つと予想される場合は、原画を損なわない範囲で軽減する
AIは、欠けた部分を推測して描き足したり、本来の線を汚れと判断して消したりする可能性があります。そこで、「迷ったら直さない」という慎重な方針を入れました。
AIに任せたのは作業。採用判断は人が行う
AIによる出力後は、78枚を一枚ずつ目視で点検しました。
その結果、意図しない変化が見られた2枚をエラーとして不採用にしました。AIへ一括で依頼しても、出力をそのままアプリへ入れたわけではありません。
AIに任せたのは、修繕の作業です。何をアプリへ採用するかという最後の判断は、人が行いました。
AI修繕後の「魔術師」

第一段階で残っていた黒い点や白い線、背景の色むら、塗りのずれが軽減されました。人物、背景、小物、構図はできる限り維持しながら、全体が見やすく整っています。
修繕前後を比べた筆者の所感としては、見栄えは劇的に改善しました。特にスマートフォンでカードを大きく表示したとき、傷や汚れに見える部分ではなく、カード本来の絵柄へ目を向けやすくなったと感じています。
これはAIで新しいタロットカードを生成したものではありません。伝統的なカードの構図と画風を残しながら、アプリで見やすい状態を目指して修繕したものです。
手作業をしたから、AIに任せる範囲を決められた
振り返ると、今回の修繕で重要だったのは、手作業とAIのどちらか一方を選ぶことではありませんでした。
最初に自分の手でカードを見ることで、残すべき画風や線を知る。AIで78枚の細かな修繕を進める。そして最後は人の目で確認する。この三つの工程がそろったことで、効率と原画への敬意を両立できたように思います。
正直なところ、78枚を手で整えている最中は、「これは本当に終わるのだろうか」と思うこともありました。それでも、その遠回りがあったからこそ、AIへ何を頼み、何を頼まないかを具体的に決められました。
開発者向けの小さな補足
第二段階では画像の縦横サイズも調整しました。数ピクセル大きくした一方、サイズを4の倍数にそろえたことで、Unityへのインポート後は容量を小さくできました。結果はUnity側のインポート設定にも左右されますが、アプリ容量を考えるうえでも有効な調整でした。
修繕した78枚を、アプリでご覧いただけます
今回修繕したカードは、Androidアプリ「タロット占い ウェイト版 象徴で読む78枚リーディング」に収録しています。
伝統的なライダー・ウェイト版の大アルカナ22枚・小アルカナ56枚を使い、カードの意味だけでなく、絵柄に描かれた象徴にも目を向けながらタロット占いを楽しめるアプリです。
実際にカードをご覧になり、「見やすかった」「この雰囲気が好き」「ここはもっと改善してほしい」など感じたことがありましたら、Google Playで率直な評価やレビューをお寄せいただけると、今後の開発の大きな励みになります。
まだ改善したい部分はありますが、一枚ずつ手を入れながら、より楽しんでいただけるタロットアプリへ育ててまいります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事を書いたチーム
サンクタツリー
Unityを中心に、占いやゲームなどのアプリを開発する小規模チームです。ユーザーの声を取り入れながら、機能追加、カード表現の改善、ローカライズなどを継続しています。